大野由美子
制作年度:2020
サイズ:60×42×0.1cm
素材: 鉛筆/トレーシングペーパー
ステイトメント:
私の近年のテーマはユートピア、ユートピア建築、すなわち想像の世界のみに存在する理想的な世界です。
私は自らの出身国である日本を東側諸国と西側諸国の中間に位置した国と捉えています。日本はアメリカからの強い影響を受けてきた歴史があり、経済的、政治的には西側諸国です。しかしながら、日本人の持つ形式や画一化社会への傾向はある意味社会主義国家の持つ社会的基準に類似していると考え、その類似点は建築の分野にも見られます。
私はロシア、ハンガリー、チェコ等の旧社会主義国家でおよそ10年間制作活動をしたのち、現在は日本とアメリカで活動をしています。私は近年、冷戦時代のアメリカとソ連の関係性に興味を持ち、ロシアではソ連建築について、そしてアメリカでは社会主義の建築と共通点の多いブルータリズム建築の研究をしていました。そして日本のメタボリズム建築との比較研究をし、それらの題材を扱った作品を制作しています。冷戦時には敵同士であった両国にも文化的な交錯が私にとっては見られ、日本人として生まれたことで自ずと私の個人的な歴史やアイデンティティもやはり両国と大きく関係をしていると考えます。日本と大きく関係するこの両国の比較研究をすることは私自身のルーツを学ぶにあたり非常に重要な意味を持ちます。一見全く異なる地域や文化のイメージを一つに組み合わせることで自分独自の視点で世界をつなげていく行為を続けていきたいと思っております。
私は主な媒体として鋳込みの技法を用いた磁器とドローイングを用いていますが、それらは両方とも表面性と大きくつながるものです。ドローイングの作品では様々な物質の表面の画像をトレーシングして埋めていき、架空の建築物をものの表面だけで形成していきます。一方、鋳込みのプロセスはある立体的なものの表面をコピーすることで自ずと表面、つまり平面、が立体となることから、ある種平面と立体の中間に位置する技法だと考えます。これらの手法を用いることで表面から中身、つまり内容を作るという試みをしています。
プロフィール:
学歴
2003-2004年 グラスゴー美術大学にて2学期間交換留学(スコットランド)
2001-2005年 京都精華大学芸術学部造形学科洋画コース 学士
2005-2007年 ハンガリー美術大学インターメディア学科、絵画学科 (ハンガリー)
2007-2008年 プラハ美術大学、絵画学科(チェコ)
2008-2010年 プラハ美術工芸大学大学院インターメディア学科 修士(チェコ)
2011-2012年 ベツァレル美術デザインアカデミー美術学部(イスラエル)
2015-2016年 サンクトペテルブルグ国立文化大学準備コース(ロシア)
2016-2018年 サンクトペテルブルグシュティグリツ国立美術デザイン大学大学院陶芸学科 優等修士(ロシア)
助成/奨学金/受賞
2005-2007年 ハンガリー政府奨学金2年間
2007-2008年 文化庁新進芸術家海外留学生度200日研修
2008-2010年 チェコ政府奨学金2年間
2011-2012年 イスラエル政府奨学金1年間
2012年 朝日新聞文化財団
2015-2018年 ロシア政府奨学金3年間
2018年 「CAF賞」ファイナリスト
パブリックコレクション:
エラブガ国立歴史建築美術館所蔵(ロシア エラブガ)
Kohler Co. コレクション所蔵(アメリカ ウィスコンシン)
John Michael Kohler Arts Centerコレクション所蔵(アメリカ ウィスコンシン)
レジデンシ―:
2008年 At Home Galleryにて1ヶ月間滞在(スロバキア シャモリン)
2011年 Meetfactoryにて3ヶ月間滞在(チェコ プラハ)
2015年 Gyeonggi Creation Centerにて3ヶ月間滞在(韓国 アンサン)
2017年 ISCPにて3ヶ月間滞在(アメリカ ニューヨーク)
2018年 MASS MoCAにて5週間滞在(アメリカ マサチューセッツ)
2019年 John Michael Kohler Arts Centerにて3ヶ月間滞在(アメリカ ウィスコンシン)
2019年 Retreatにて3日間滞在(アメリカ ニューヨーク)
2019年 St. Petersburg Art Residencyにて1ヶ月間滞在(ロシア サンクトペテルブルグ)
2019年 Taipei Artist Villageにて3ヶ月間滞在(台湾 台北)
2020-2021年 Paradise AIRにて2ヶ月間滞在 (松戸)
2021年 陶芸の森にて6ヶ月間滞在(信楽)
2021年 HI S A I芸術家の住む街プロジェクト(津)